sunawachi.com「レザー・コラム」

レザーにまつわるあれこれを不定期で書く、sunawachi.comのコラム

「私の好きなレザーの話」

レザーというのは、動物の種類、鞣し方(タンニン鞣し/クロム鞣し)、染色、仕上げの方法などによって、種類は無限に生み出されますから、いい悪いというより、自分の好き好きで選べばいいのだと、基本的には思います。

ただ、さまざまなレザーに触れて、使っていかないと、「自分の好き」すらも判断できないということはあります。

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私の好きなレザーの話をします。

元々は動物の皮ですから、荒々しい野性味の残るものがいいです。
いわゆる高級バッグ(必ず「いわゆる」を入れたくなります)のレザーというのは滑らかだったり、はじめから柔らかかったり、洗練されているように見えるものです。

これは好き好きですから、なんとも言えないのですが、私の偏見で書きます。

そういうレザーは、ほとんど……
①店頭にある時に一番輝いて見えるように図られている。
 つまり、新品の時が一番ステキで、そこからは古びていく。
②個体差が出ないように、均一な見た目になるよう処理されている。
 顔料塗装で表面を覆ったり、型押しでシボが表現されていたり、動物らしさは極力糊塗されている。
③剥げる。
 銀面(革のオモテ面)に吹き付けられている顔料が剥離したら、一気にみすぼらしくなる。

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こういう表情のレザーという一例

腕のいい革カバン職人がどこかにいて、評判が高まるにつれて、顧客が増え、注文が列をなすようになります。もしかしたら、この時点が作者にとっても顧客にとっても、一番幸せな瞬間かもしれません。

作り手自身にビジネス上の野心がある場合もありますし、彼の腕に目をつけて「これは売れる」と見込むビジネスマンが現れる場合もあるでしょう。

たいていのビジネスというのは、こういう方法で拡大します。マクドナルドもそうでした(映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』ご参照)。

やがて、その職人でなくても、パートのおばちゃんや賃金の低廉な外国でも流れ作業でつくれる大量生産品にシフトしていって、有力なデザイナーやマーケターやクリエイティブ・ディレクターが、「付加価値」というものをあの手この手で作り上げて、メガブランドになっていきます。

よくも悪しくも、ビジネスというのはそういうものですから、それはいいとして……。

私の好きなレザーの話をします。

使っていくうちに、ちがう魅力が滲み出てくるものがいいです。

こちらは、もう5年目になるBMJ Maverickのブルーです。海外のあちこちにも連れて行っていますし、特段手入れもしていません。ごくたまに、思い出した時だけブラシをかけたり、クリームをうすく擦り込む程度です。

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ただ、乱暴な扱いはしません。日々の付き合い方は、メンテと同等に大事なのだと思います。

元々ブルーだったものが、いまや光の当たり方によって、紺色にもグレーにも、やや緑がかっても見えるのですが、新品のブルーはこんな感じです。

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つまり、このコラムの一枚目に載せた写真は、ふたつとも同種のカバンなんです。
「いいカバンだなぁ。(作者の)後藤さん、ありがとう」と、5年たっても思います。

電車に乗ると、向い側のビジネスマンが膝に置いたカバンが見えます。
たいてい、カバンの角が剥げています。上記で語ったような顔料の問題とか、パイピングが合成皮革であるなどの理由によるのだと思います。

BMJ Maverick、剥げる気配もないんですよ(いや、削ったら剥げますよ、そりゃ)。

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もうひとつ、私の好きなレザーの話をします。

思い出を共有できるやつがいいです。
うやうやしくクローゼットから取り出して、そーっと扱うようなモノではなく、ふつうに付き合えるやつ。

時にドラ息子のように「こいつ○万円もしやがって、カネかかったな~」と思いつつも、かわいくて仕方ないカバン。時に箱入り娘のように「お前を着て、モーターサイクルで旅をしたよな~」と振り返られる革ジャン。

使うこと、たまに休ませること、手で触ってやること、よく見てやること。そういったふつうの付き合いが、結局はレザーを長持ちさせますし、好きなモノをずっと好きでいられますね。

 

レザーもそれぞれなら、使い方も人それぞれなのですが、あなたの好きなレザーを見つけて、あなたなりの態度で、永く使えばいいと思います。
スナワチのスローガンには、そういう考えが込められています。

「愛せるモノを、持たないか?」

 

スナワチ大阪ストア
大阪市西区阿波座1-2-2
06-6616-9626
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「であいについて」

スナワチ社長の前田将多です。レザー専門店「スナワチ大阪ストア」では、日本の小さなレザーブランドを取り扱っていますが、そのうちの一つ、Big Mouse Jimmy後藤さんが店舗をシェアして、ここに常駐しています。

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「後藤さんとはどうやって出会ったのですか?」と、よく訊かれますので、そのあたりをジョージ店長に語ってもらうことにします。

 

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やあ、じょーじです。ショータはれざー屋のほかに、モノかきぎょうと、くりえーてぃぶでれくたーとかいう仕事をしていていそがしそうなので、ボクが書きます。

あれはショータがまだこうこく会社にいたころの2014ねんです。ぜんべいおーぷんテニスでにしこり選手がじゅん優勝したころです。
……って、ボクはうまれていたのかな(社長註:ジョージは保護犬のため生年が不明なのです)。

「ジャパンれざーアワード」という公募のこんてすとがあって、にほん全国のうでっこきのれざークラフツまんたちが「バッグぶもん」「ふっとウェアぶもん」「ふぁっしょん雑貨ぶもん」というそれぞれのかてごりーに作品をおうぼしてきます(いまはかてごりーが変わっているようです)。

その応ぼさくひんが、おおさかの阪急ひゃかてんで展示されるいべんとがありました(これもいまではとうきょうでしか開催されていないみたいです。なんやねん)。

スナワチを構想ちゅうのショータは、つくり手をさがすために作品てんじ会をみにいき、ひとつひとつ写真をとってちぇっくしていきました。

そのときに目にとまったのが、ゴトウのバッグでした。すてっちが特ちょう的で、なんとなくウェスタンなふんいきが男らしくてカッコいいと思いました。

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初期のさくひんははハズかしいと思うのでゴトウ、ゴメン…

ショータは、主催しゃに電話をして、その作家のれんらく先をたずねました。
ところが
「こじん情報なのでおしえられません」
とことわられました。みなさんバイヤーにアッピールしたくて出すのに、なんじゃこりゃです。
ショータはあきらめずに、「では、私のれんらく先をお教えしますので、おつたえください」ということにして、ようやくゴトウからめーるがきました。

ショータはおおさか港からふぇりーにのって、とうじおおいた県にいたゴトウに会いにいきました。12がつのめちゃさむい日でした。

はじめてあったゴトウは、ぬぼーとしててあまりたくさん話すたいぷではありませんでしたが、かえりは駅までクルマでおくってくれて、いいひとそうでした。
そのひ、バッグをひとつおーだーして、翌年でき上がったそれを見て、ゴトウの腕まえがたしかであることを知りました。

しかし、スナワチがおんらいんではじまったのは、それからやく1年後です。
会社をやめたショータは、ゴトウにスナワチ用のれざー製品をいくつか発注してから、カナダでかうぼーいをしたり、帰国ごに本をかいたりしました。

スナワチほっそく以来、とりあつかいぶらんどのひとつでしたが、2018年に店ぽをつくる時に連らくすると、「いっしょにやりたい」とゴトウから要ぼーがありました。

しょーたは一瞬かんがえたのちに、しょうだくし、アトリエがあるお店にすることにしました。ゴトウはじんせいのほとんどを地元ですごしてきて、工房にこもってレザーでモノをつくっていましたから、そとの世界にでたかったみたいです。
「おおいたにはあまり好きなものがなかった。家業ののう業も、田んぼにはいるのが好きじゃなかったし、アウトドアも興味ないから自然も好きじゃないし……」
ゴトウはたまにさびしいことをいいます。

ショータはとうきょう、あめりか、おおさか、いんどねしあ、かなだと、あちこちに住んできたヒトなので、いろんなばしょを知るのはゴトウのクリテブ、クリエイチブ、……クリエイテビナントカにもよいとおもいました。

そして、スナワチ大阪ストアでは、ボクがてんちょうに就にんすることになるのですが、ショータとゴトウはお互いにラッキーだったといいます。

 ショータも仲間がちかくにできてうれしいし、ゴトウはおきゃくさんのはんのうをジカにしることができて、こういうけいけんははじめてだそうです。これまでは、たのまれたモノをつくってのうひんしたら、それまでだったからです。

おかげさまで、ゴトウにはおおくのおーだーをいただいて、まいにちモノづくりにいそしんでいます。おまたせしているみなさんには、きがなに、おたのしみにどうぞ、とおねがいもうしあげます。

ボクはてんちょうとして、ゴトウを上からめせんで見まもり、

 
ショータのひざの上ではたらき、

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よくたべてよくねて、スナワチをささえていくつもりです。

て、いうてるまに、さっそくネムー……

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スナワチ大阪ストア
大阪市西区阿波座1-2-2
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「栃木レザーを訪問」

昨年末に、泣く子もだまる栃木レザーを見学させてもらってきましたので、レポートします。
栃木レザーと聞いても、レザーファン以外はわからないかもしれませんが、国内タンナー(レザーを鞣す工場)としては非常に高い評判を獲得している企業です。そうです、いち企業です。
栃木レザーの名前が売れすぎてしまって、栃木というのはレザーの名産地なのだと勘違いしている人もいますが、栃木レザー株式会社という企業がそこにあるだけです。

ここで、レザーにはクロム鞣しとタンニン鞣しがあるというお話の復習をしなくてはなりませんが、市場に出回るレザーの9割方はクロムです。

塩基性硫酸クロムという薬品で防腐する方法で、短時間で均一に、そして比較的柔らかく鞣すことができると言えます。その代わり、経年変化による「育てる楽しみ」は少ないのが特徴です。わかりやすく言えば、革靴のレザーは多少柔らかくはなりますが、大きな変化はしない、ということです。

タンニン鞣しは、ミモザやチェスナットといった植物から抽出した樹脂(いわゆる渋)によって動物の皮を革にします。鞣すというのは、そのままでは腐ってしまう獣の皮膚を防腐処理することです。それから柔らかさや風合いや色彩について、さまざまな調整・加工がされるわけです。

栃木レザーが製造するレザーは、タンニン成分が溶け込んだ液体が入ったピット漕という、要するに銭湯のお風呂みたいなプールに皮を漬け込んでつくります。1760年に英国のマックス・ブリッジという人が考案した方法だそうですが、時間がかかるため、現代においては非効率的な製法です。タンニン鞣しであっても、通常は超大型のドラム型洗濯機のような、ドラムに入れて回す方が一般的です。
ところが、栃木レザーには国内最大のピット漕があり、ゆっくりとじっくりと、手間を惜しまずレザーをつくっています。

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これは皮を脱毛する漕です

細かくて長い工程はここでは省きます。栃木レザーのウェブサイトで「Process」をご覧になると映像付きで解説してくれます。

栃木レザー株式会社

 

栃木レザーの山本昌邦社長ともゆっくりお話しをさせていただいたのですが、私が持っていた先入観は覆されました。失礼を承知で書きますが、私は栃木レザーというのは、正直「マーケティングがうまい」会社だと思っていたのです。
確かにレザーは文句なしにいい。スナワチに常駐しているBig Mouse Jimmy後藤さんも、栃木レザーを使って製品をつくっています。

しかし、あまりにその名が日本の革業界の隅々に轟いたために、誰でも彼でもが使うようになって、製造クオリティに疑問があるようなブランドでも、とりあえず「栃木レザー使用」と謳うようになっているように思われたからです。

山本社長も「名前だけが独り歩きしてしまった現象は確かにある」と認める部分があるようですが、それでも、名に恥じないレザーを手抜きなしでつくり続け、また進化させていくことしかない、と私たちに語ってくれました。

もうひとつ感銘を受けたのは(山本社長のお話は感銘の連続だったのですが……)、「うちはすべてオープンにお見せする」という方針です。
私は以前にタンナー見学をさせてもらった経験を踏まえ、「写真を撮ってマズイところがあればおっしゃってください」と案内役の製造統括部長に事前に言ったのですが、答えは「ありません。どこでも撮ってもらってオッケーです」というフレンドリーなものでした。

レザー業界、特に鞣し屋さんというのは、歴史的に被差別部落とのかかわりがあり、「なんか怖い」と思われているのが一般にあるかと思います。
江戸時代に、村の農耕馬や家畜の牛が死ぬと、村人は部落に持っていって賤民にその処理をさせました。しかも、それは穢れのある行為とされ忌避されたため、作業は夜に限られたといいます(『皮革の歴史と民俗』解放出版社 2009年)。

山本社長は「だからこそ、ぜんぶオープンにして、見せるんです」と胸を張ります。

どの工程でもスタッフの方が黙々と手を動かし、我々が通りかかればにこやかに挨拶をしてくださり、工場内は凛とした雰囲気が漂っていました。

 

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山本社長は商社マンとして原皮(動物の皮を剥いで、塩漬けにして売買される)を扱う仕事をしたことから、レザー業界にかかわりを持ちました。栃木レザーの経営が一時期傾いた時に、先代から乞われて一念発起して栃木に居を移し、社を継ぎ、立て直しに取り組んだそうです。

「僕が仕事しはじめた70年代には、100人いたら7、80人は革のカバンを使ってたと思う。それが今は、2人か3人よ。だけど、そういう人たちに向けて、本当にいい革をつくらなくてはいけない!」

身が引き締まる思いで拝聴しました。
見上げた社長率いる、見上げた会社でした。

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スナワチもウェブサイトに謳う通り、「誰かの評価ではなく、ご自分で本物・良品を見抜く目を持つ」少数の方々のために、「日本のクラフツマンたちが誇りを持って作る皮革製品をご提供いたします」。

2019年になりました。今年もよろしくお願い申し上げます。

 

スナワチ大阪ストア
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「正しくても、やりたくないこと」

スナワチ大阪ストアをオープンして半年になりました。
クラフツマンの後藤さんとジョージ店長と、ひと夏を越して、もうすぐ冬を迎えることになります。あっという間でしたな……。おかげさまで楽しくやっております。
後藤さんは多くのご注文をいただき、毎日せっせと仕事をしています。その後ろ姿を見ていると、「この人は本当に革でモノをつくるのが好きなんだなぁ」とつくづく感じ入ります。

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いつもシャツが同じで、別々の日だとわかりにくい後藤さんです

店は大阪の本町の裏通りにあって、非常に「入りにくい」雰囲気を醸し出しております。ジョージ店長が外に飛び出しそうな時や、エアコンをつけている猛暑の日はドアを閉めていたので、通りがかりの方が恐る恐る扉を引いて、
「入ってもいいでしょうか……?」
なんて訊いてこられたりします。
もちろん入ってきてください。ゆっくりご覧いただけるように、裏通りに開設したのです。

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東京のほか、山形、石川、福岡、大分、愛媛、神奈川、広島などなど、関西以外の遠方からお立ち寄りになる方も多く、先日は沖縄からも来客がありました。もちろん大阪旅行や出張にからめて来てくださるのですが、ありがたいことです。外国人の方も何人か見えました。スイスの盆栽アーティスト、道具入れをつくって送ったら喜んでくれてたもんな、後藤さん。

我々が毎日使うコーヒー豆も、多くの方々がお土産に持ってきてくれまして、本当に助かりました。
心の底から感謝申し上げます。

 この店は建築家の坪井秀矩さんにつくってもらう時に、私はラフの図面を描いて、内装は「探偵事務所がイメージです」と伝えました。
『話題のショップをつくる注目の空間デザイナー・建築家100人』という書籍に、坪井さんの仕事例として、スナワチが掲載されています。

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レザー製品の店であり、後藤さんのアトリエであり、私の書斎であり、コンセプトは探偵事務所。そのせいなのかなんなのか、実際に東京のIT企業に勤める女性が私のところに働き方の悩み相談に足を運ばれたり、広告会社の若手社員の方が相談という雑談に来られたりしました。私は探偵や医者ではないので、本当に雑談しかできないのですが、一緒にコーヒー飲んでおしゃべりするのは楽しいものです。あちらも「楽しかった。なんか元気出た」と思ってくれれば、まぁそれでいいでしょう。

 

はじめたからには5年、10年、それ以上と続けなくてはいけません。

もうちょっと「商売」として一生懸命やらなくてはいけないのですが、どうもダメです。
床面積1㎡毎の売上とか、前年比とかいつもいつも考えていたら、デスクでのコーヒーが苦くなります。大儲けしたら閉店後に飲むウィスキーがうまいのでしょうけど、今でもウィスキーはまずくはないです……。

オンラインストアではじまったスナワチですが、一回閲覧したらブラウザ上をいつまでも追いかけてくるような広告はしたくない、一度買ったらあれこれ度々送ってくるような店も「一度抱かれたらカレシ面する男」みたいで気持ち悪い……。
ウェブ・プロモーション的には正しいのでしょうけど、どうもダメなのです。

 

基本姿勢がこんな人間は、いいビジネスマンとはいえません。

しかし、この酔狂みたいな戯言にはつづきがあって、

 

糸井重里さんはワンちゃんについて「わたしの仕事は元気でいることです」と書かれていましたが、病める時も健やかなる時も、楽しくやることがスナワチの仕事だなぁとの思いを新たにしております。

そして今日もスナワチ大阪ストアで、あなたとコーヒー飲みつつレザーの話をできる日を待っております。あ、豆がない。

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スナワチ大阪ストア
大阪市西区阿波座1-2-2
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「ショータのうでわ」

こんかいのれざーこらむも、ボクがかきます。すなわちてんちょうのじょーじです。

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しゃちょうをしているショータのうでわについてかきます。
ショータはいつもこれをつけています。

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はたらいてる時も、ねてる時も、おふろの時も、のんでる時もつけています。

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うちのとらちゃんとたたかう時もつけています。

 

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なにかいみがあるのかきいてみたところ、「れざー屋をやるんだ」という決いひょう明で、かれがまだこうこくがいしゃのでんつーでコペーライタをしているときにつけたそうです。
コペーライタというのはなにをするしごとなのか、ボクにはわかりませんが、なんかペペッと書くらしいです。たぶんボクにもできます。よゆーです。

 ショータがその、ペペッとしてたころに、ともだちのともだちであったエム・リップルのむらかみさんに出あって、れざーでモノをつくるしごとをしているヒトたちがいることを知りました。
かれらはじぶんでかんがえて、じぶんでつくって、じぶんで売っています。だから、うれればうれるほど、かんがえる時間やつくる時間がなくなってたいへんなのではないかとおもったそうです。

だったら、ショータがペペッとしたらおやくにたてて、おきゃくさんもいいれざーぷろだくつに出あえるのではないかとかんがえたということです。

でも、かいしゃにいてペペッとするのはいわゆるあこがれの職ぎょうといわれているしごとでもあったので、ほんとうにやるゆうきはなかなかでません。

でも、「やるぜ」と決しんしたときに、kawacoyaというぶらんどをやっているマツザワさんというひとから、うでわを買いました。

これは、ぶあついいち枚のかわを、まあるく切って、かどをすこしずつ、すこしずつ削って、わっかにします。それをお湯にしずめてやわらかくして、ぎんめん(れざーのひょう面)がおもて側になるようねじってかわかします。
つぎ目がなくて、じょうぶなんです。ほとんど切れません。

それをぴかぴかにみがいてできあがりなのですが、うでにつけるときは、またごじゅう度のお湯にしずめてやわらかくします。あ、おんどはふぁーれんへいとではないく、セルシウスでいいました、ボクは。ねんのためな。

そして、れざーをゆっくりのばしてのばして、うでにとおします。かわくとちぢんで、もううでからぬけなくなります。

おふろのおゆは、よんじゅう度くらいですから、ひくいです。あ、セルシウスな。ふぁーれんへいとだと、えーと、ひゃくよん度かな。

ショータのうでをななじゅう度のおゆに入れたら、またやわらかくなってとれるかもしれませんが、ショータはやけどします。なきさけぶとおもいます。しらんけど。

そんなわけで、このうでわは切れるまで、もしくはしぬまでしておきたいと思っているそうです。

ボクはくびわもきらいなのでゴメンです。
さんぽするときも、ボクはヒモをつけられたらあるきません。だんこきょひです。

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じゆうというものは、にんげんがそのれきしをかけて獲得してきたものですから、じゆうのくににうまれたいぬであるボクにもおすそわけがあってしかるべきなのです。

ボクは、あるきたい時にあるき、はたらきたい時にはたらき、うんち出たい時に出て、ねたい時にねるのです。

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こうしょうな話をしてやったので、きょうはつかれたな。

では、はたらいたから、おやつくれショータ

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「財布とかカバンとか、いらない社会」

スマホが殺したものを数え上げればキリがありません。
まず、書籍、そしてゲーム機。それから、ラジオや音楽プレイヤー、コンパクトカメラ。その他、計算機、手帳、ペンなどもかなり喰われています。

電子決済がもっと普及したら、そのうちに財布も不要になってしまうかもしれません。
レザー製品を取り扱うスナワチとしては、困った事態になります。

電子決済は、日本ではまだ18%と浸透が遅いようです。チャイナ60%、アメリカ46%、インド38%だといいます。

style.nikkei.com

最近はタクシーでは減ってきたように思いますが、確かに、バーなどでは「現金のみ」というお店はまだまだ多いです。

日本のキャッシュレス化が進まない理由としては、
・都市生活者が多く、ATMがどこにでもある。
・安全。他人にカネを奪われる確率が低い。
・貨幣への信頼性が高い。偽札がほとんどない。
・決済サービスの乱立。あれこれありすぎて選べない。お店側も端末の用意や、審査手続きが煩雑。
・なんか怖いという意識が根強い。
などが挙げられます。

しかし、全国のATMにお金を準備する配送費や維持費が、銀行各社の大きな負担となっており、経済産業省は2027年までに電子決済普及率を40%までもっていく目標を定めています。

これは時代の潮流であり、国の要請ですから、そのうちにそのようになるでしょう。

アップルや楽天、ケータイ各社や、量販系/交通系決済会社が電子決済システムを持っているのは、個人データの取得のためです。誰が、どこで、なにを、いくらで買ったというデータを、膨大な量になるまで集めて、サービス開発に活用して、抜きんでようと競っているわけです。

生活者からしたら気持ちの悪い話でしょうけど、これももはや避けられないことです。
フェイスブックが出てきた時に、「これは個人情報を無料で集めて、分析して、個人に合った小口~大口の広告を企業に売るサービスだ(気持ちわりいっ)」と、私は感じていましたが、やがて気づきました。
「個人にとっては、自分の個人情報なんておよそ意味がない」ということに。

事実、私はフェイスブックをはじめとしたSNSも使っていて実害はない(認識していない)し、フェイスブック社の個人情報漏洩は8700万人分以上という大規模な事件でしたが、日本ではさほど話題にもならかった印象です。
それは個人にとっては痛くも痒くもないのに、国家レベルでの損害が懸念される(はっきりとは見えない)、という二重構造があるからでしょう(もちろんアメリカでは大スキャンダルでしたが、FB社は潰れることもなく存続しています)。

官民一体の目論見により、キャッシュレス化は促進されます。
スナワチに関しては、レザーの財布だけでなく、もしかしたら、将来的には、人はカバンすらも持たなくて、スマホ(ともすでに呼ばれない端末を)ひとつ持って、なにもかも用事は済ませられるような社会になるかもしれません。

それでも、あまり悲観もしていません。

時代が変わるなら、それに即したレザー製品を考案してもいいでしょう。いつの世も服は着てるでしょうから、いつか革ジャンもつくりたいですし。帽子もいいですね。

レザーと人の結びつきというのは特別なものがあると信じておりますので、化学素材やハイテクデバイスにさほど簡単に駆逐されるとは考えていません。

なにより、レザーはカッコいいから。
丁寧に縫われた財布、手応えのあるカバン、光沢が艶めかしい革ジャン、ちょっとした存在感を放つ脇役としてのレザー小物など、持っていたらカッコいいですから。
ハイテク製品と合わせて持っても、なおカッコいいですから。

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もちろん、カッコいい悪いのセンスも時代とともに変化しますが、これは理屈ではないんですよね。

頭で考える部分と、心で感じる部分を、両方バランスよく持って生きていきたいと、難しい時代だからこそ思います。

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「僕の仕事、みんなとの仕事」

スナワチ大阪ストアでは、KIGO特集をしています。
ブルハイド(去勢していないオス牛の革)を使ったカバンが代表作である、ものづくりの町、東大阪のレザーブランドです。

ブル以外にもカーフ(生後6カ月以内の仔牛)、キップ(6カ月から2年程度の若い牛)、羊、山羊など、さまざまなレザーを採用したカバンが店内に置いてあります。

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先日、友人が店にやって来て、

 と言います。
たしかに、似ているどころか、おんなじかたちです。
KIGO代表の内山さんに訊いてみました。なかなかおもしろい話を聞くことができました。

「これは、僕が元々いた会社で修業中に作ってたものですわ。僕が最も尊敬するバッグ・デザイナーが手がけたもので、僕はまだまだ下っ端でしたから、作ってたと言えるかどうかわかりませんけど……」

いえ、作ってたんですよ。

私は以前、テレビCMを作っていましたから、それについては思うことがあります。
CMは、広告主がいて、その仕事を獲得してくる営業がいて、表現を統括するクリエーティブ・ディレクター、企画するプランナーやコピーライター、またはアートディレクター、予算とスケジュールを管理する制作会社のプロデューサー、さまざまな推進業務や雑務をこなすアシスタント、CMの演出を取り仕切るディレクター、あたりが主要な制作陣で、これだけですでに多くの人がいます。
撮影ともなれば、カメラマンとそのアシスタント、照明さんたち、セットや小道具を扱う美術さん、出演者とその事務所スタッフ、そのヘアメイクさん、スタイリストさん、撮影スタジオの人、編集スタジオの技師、音楽スタジオの技師、CGを作る技術者などなど、実にたくさんの人たちがかかわります。

その全員が「あのCMは私が作った」とは、そりゃ言えはしないだろうとは思うのですが、「私も、みんなと作った」くらいは言っていいのではないかと感じます。

このカバンは、Dカン(金属ループ)がたくさん付いていて、ハンドルやショルダーストラップの位置を付け替えることによって、トート→ショルダー→ブリーフケースのように3WAYで使えるという優れたものです。

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内山さんによると、「その当時は月に500個売れていた」そうです。
「日本のバッグ業界の遺産です」とまで評していました。

デザインもよく計算されたもので、「なにかが売れると、すぐにパクッた商品が出てきますよね。これもそうでした。でも、安易にパクッたものはぜんぜんちがった。こうはカッコよくなかった」と言います。そのデザイナーに惚れ込んでいたことが窺えます。

これをオリジナルで開発したブランドはもうなくなってしまい、そのデザイナーさんもすでにこの世を去ってしまったそうです。

内山さんがご自分のブランドを持つようになって、当時の仕事仲間から「あれ、復刻してよ」と乞われて作ったのがこのカバンで、今後も継続的に作る予定は、ないと言います。

スナワチ大阪ストアは、開店してまだふた月半です。それでも、おもしろいことが毎日のように起きて、楽しいものです。
10年以上使っているバッグの持ち主は、知りえなかった製品の背景に触れ、作り手は、若き日に畏敬の対象にしていた人と、自分の過去の仕事にまた巡り合う。

人とモノ、記憶や想いの邂逅に立ち会うことができて、レザー屋冥利に尽きる思いでした。

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