sunawachi.com「レザー・コラム」

レザーにまつわるあれこれを不定期で書く、sunawachi.comのコラム

「オーダーは、するのも請けるのもむずかしい」

1周年を迎えたスナワチ大阪ストアでは、ここのところなぜかワンオフのオーダーが続いております。ワンオフというのは「一点モノ」のことです。

一点モノというのは、「いつかこんなモノを、誰かに依頼してみたいけど、どこに頼んでいいのかわからない」というのがふつうではないでしょうか。

スナワチに常駐する後藤さんは、この1年、実にさまざまなオーダーにお応えしてきました。

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カバンや財布はもちろん、たとえば、ベルト、ウェストポーチ、盆栽アーティストの道具入れ、包丁を持ち運ぶための鞘、美容師さんのシザーケース、PCやタブレットのスリーブなどなど。

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ダンサーさんのシューズバッグ

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包丁用の鞘(さや)

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4色のトート

スナワチの取扱いブランドの中には、こういったワンオフのオーダーもお請けするところもありまして、Tochcaさんはガマ口のポーチを指定のサイズでつくってくれましたし、

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キセル入れとして使われています

KIGO内山さんは還暦お祝いだというセカンドバッグと手がけてくれました。
製作中のため、画像は完成後に……。

製品に対する一部カスタムでしたら、たいていのブランドが請けてくれます。 

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m.rippleのトートバッグにジッパーのフタを

一点モノというのは、依頼するのも、お請けするものむずかしいものです。

依頼するお客さん側からしたら、どう伝えていいのか悩むでしょうし、作り手からしたら、コミュニケーション能力が問われます。

つくるプロの目からは、依頼主の要望は、どこか相反していたり、無理な内容だったりして、昔気質の職人なら「そんなもんできねえよ! よそへ行きやがれ」とけんもほろろに断りかねません。

 では、作り手側の立場でのむずかしさを列挙してみましょう。

■レザーはなんでもあるわけではない。
それぞれ使いやすい、慣れた、好みのレザーがブランドごとにありまして、「こういう革で」という要望に応えるためには、革一枚を丸ごと仕入れなくてはなりません。

■(タンニン鞣しの場合)サンプルと同じレザーすらない。
自然に近い方法で鞣されたタンニン鞣しレザーは、動物にまったく同じ一頭がいないように、個々に差異が出やすく、同じタンナーが鞣した同じ品番のレザーであっても、色やツヤに微妙なちがいがあります。またキズやムラもあるものです。

■作者ごとに、得意な製法があって、そうでないものはお請けしづらい。
たとえば、後藤さんなら基本すべて手縫いでつくるため、布とレザーを組み合わせるのは苦手です。レザーにあらかじめ縫い穴を開けて縫うため、布ではそれができないからです。その他、作り手によって、カバン系が得意な人、小物系の人など、特性があります。

■「これとまったく同じモノをつくってくれ」はできない。
 コピー製品をつくることはできないので、まったく同じものというのはできません。同じくらいのサイズ、同じような用途のモノならできますが、既存の製品とそっくり同じなのは法的な問題はもちろん、作り手の誇りも傷つけます。

■途中でオーダーの追加や変更はできない。
製作工程において、作者は設計してから、つくる順番を頭に入れて進めます。そのため、「やっぱりここはこうしてほしい」という変更をするためには、モノをバラしたり、はじめからやり直すことになってしまいます。それにより、見積額が変わることもあります。

■既製品より安くはつくれない。
これは主に依頼主の方に大きな問題になってしまう事柄かもしれませんが、一点モノは少なくとも量産品より安くはつくれないのです。「ひとつの型をつくって、それを量産して採算ベースにのせる」というビジネスができないため、その一点で利益を生まなくては、仕事がつづけられません。
なるべく抑えられるように、既成モデルを基にしたり、過去の蓄積から無理なくできる方法を考えたりもしますが、考える時間、ゼロから取りかかる工程、要望に応える途中段階での確認、ミスした時や用途に合致させられなかった時の負担など、それはそれで通常の製作作業とは桁ちがいに気を使う仕事になることは間違いありません。

 

それでも、プロの手によって、あなただけの製品がうまく出来上がった時のよろこびはきっと価格に見合う大きなものになるはずです。まだ一年ですが、スナワチにはまだ大きな蹉跌は経験がありません。

私は、ワンオフオーダーの仕事が、広告制作に似ていることに気がつきました。
広告というのは毎回毎回一回ずつのオーダーメイドで、上記に挙げたような「これはできない」の完コピ以外のすべてを「なんとかやらなくてはいけない」なかなかムチャクチャな世界です。
前職で知らず知らずのうちに、色んな方法を学んでいたみたいです。

これからもこの独特な経験を活かして、レザーファンに「愛せるモノ」を提供していけたらという思いを新たにする次第です。

 

今月は、「BMJ後藤優太オーダー相談会」もございます。

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ワンオフはもちろん、BMJの既成モデルからのカスタムも含め、モノの大小にかかわらず、レザーでおつくりできるアイテムがあれば、ご相談にいらしてください。

日時:2019年6月15日(土)~17日(月) 11AM-7PM
場所:デザインフェスタギャラリー原宿 EAST 203
   ※WESTもあるのでご注意ください。

東京都渋谷区神宮前3-20-2

詳細はこちらもご参照ください:
「BMJ後藤優太 オーダー相談会のご案内」

See you there.
 

 

 「愛せるモノを、持たないか?」

スナワチ大阪ストア
大阪市西区阿波座1-2-2
06-6616-9626
sunawachi.com

「うまく言葉にできませんが、1周年を迎えて皆さんに感謝を」

スナワチ大阪ストアが開店より1周年を迎えました。

大阪は本町の裏通りまで、足を運んでくださいました皆さんに心から感謝申し上げます。

多くの方がSNSを通じて我々のことを知って、遠方よりお越しくださいました。一番遠かった方はドイツです(笑)。

 大阪の人が一番、スナワチの存在に気づいてないんじゃないかな、と思うくらいです……。

スナワチは、有名ではなくても、レザー製品に真摯に向き合う、腕のよいジャパンブランドのために、オンラインストアからスタートしました。2015年12月のことです。
オンラインとオフライン(リアル)のイベントを中心に数年間活動したのち、「やはりレザーは、実際を見ていただく機会・場所が必要だな」と確信するに至り、2018年にスナワチ大阪ストアを開設することにしました。

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レザーの暖簾が目印

賃貸料や光熱費などの経費が増えることへの怖れはありましたが、後藤さんとジョージ店長という仲間を得て、勇気を持って一歩を踏み出すことができました。

ストアを構想した当初は、私(前田将多)ひとりでやる予定でした。
ところが、取引先である各ブランドへそのご連絡をしたところ、後藤さんが、
「え! それなら一緒にやりたいです」
と申し出をされました。

彼は、あんまり地元大分のことをよく言わないのですが(苦笑)、出たかったみたいです。
それを聞いた私ははじめ戸惑いました。「オレひとりでも食っていけるかわからないのに、二人になったらどうするんだよ……」と、思ったのです。

それはまったくの見込み違いでした。

後藤さんには助けてもらってばかりです。店をはじめるというのは、お金がかかります。工事費以外に、掃除機、WiFiルータや電話機といった通信機器、プリンタやレジシステムなどOA器機、展示什器、収納用品、トイレ用品、食器などなど、必要なものは次から次に出てきてキリがないくらいです。
後藤さんはそれらのいくつかは用意してくれましたし、運営に関しても、世話になってばかりです。開店時間は11時なのに、いつも朝9時には店(アトリエ)に来て、シャッターを開けて草木と看板を出しておいてくれます。

そしてなにより、仕事をする背中を、私に見せてくれます。人間がだらしない私は、いつも彼の仕事への取り組み方に叱咤される思いです。

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後藤さんのそういう姿を伝えるのが、私の仕事でもあり、おかげさまで多くの方々が、後藤さんの手がけるレザー製品を求めて、来店くださったり、注文をくださったりします。

ほかの取扱いブランドの皆さんも、彼らの大阪出張や、私たちのイベントの際には顔を見せてくれて、本当に気持ちのよい人たちばかりです。カラーオーダーや一部カスタムにも快く応えてくれて、いつも助かっています。

 

最後に、そして最高に、お客さんたちには充分に感謝しきれないほどです。

私が、電通を辞めて一年半ほど経ったころに、ある事件がきっかけで「広告業界という無法地帯へ」というコラムをネットに公開しました。
それはその後、同名の書籍になるのですが、声をかけてきた出版社の編集者さんは「お客様は本当に神様なのか、という趣旨で書いてもらえないか」と言ったのです。

無理難題が毎日のように降りかかる広告制作の現場を
〈仕事の構造が、「患者の指示に従って治療を行なう医師」のようなものだ(中略)。そんなものが成立するはずがない〉
と、私は書きました。

 今、スナワチをやっていて、「作り手へのリスペクトを忘れないお客さんが多くて、実に幸せなことだ」と痛感します。私が知っていた世界とはまったくちがうのです。

こんな、最高の品質の、最低に流行らないモノを売っていると、毎月毎月売上がいいわけではありません。
「今月はヤバいな~」と思っていた月末に、急に来てくれたお客さんが大きなオーダーをくれたり、カバンを買ってくれたりした時など、「お客様は神様だ」とは思わずとも、本当に「この方は神様が遣わせてくれたのではないか……」なんて、痺れるような感謝に打たれます。アホです。

私も後藤さんも(たぶんジョージ店長も)、お客さんの期待には応えたいですし、できればそれを超えるモノを提供したいと、日々考えています。
払われたリスペクトをより多くお返しして、マニュアルのない自由闊達な空気を保つことが、店の健全な発展につながるはずだと信じて、少しずつ進んでいきます。

この商売は、急成長することはありえません。小さなことを積み重ねていくことしかできないと知っています。

 

1年の節目に、関係者である皆さんへの感謝を改めて言葉にさせていただきました。
私としたことが、あまりうまくまとまりませんでした。
とにかく……、

スナワチ大阪ストアで、またお目にかかれますことを、心から願っております。

 

「愛せるモノを、持たないか?」
スナワチ大阪ストア
大阪市西区阿波座1-2-2
06-6616-9626
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「私の好きなレザーの話」

レザーというのは、動物の種類、鞣し方(タンニン鞣し/クロム鞣し)、染色、仕上げの方法などによって、種類は無限に生み出されますから、いい悪いというより、自分の好き好きで選べばいいのだと、基本的には思います。

ただ、さまざまなレザーに触れて、使っていかないと、「自分の好き」すらも判断できないということはあります。

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私の好きなレザーの話をします。

元々は動物の皮ですから、荒々しい野性味の残るものがいいです。
いわゆる高級バッグ(必ず「いわゆる」を入れたくなります)のレザーというのは滑らかだったり、はじめから柔らかかったり、洗練されているように見えるものです。

これは好き好きですから、なんとも言えないのですが、私の偏見で書きます。

そういうレザーは、ほとんど……
①店頭にある時に一番輝いて見えるように図られている。
 つまり、新品の時が一番ステキで、そこからは古びていく。
②個体差が出ないように、均一な見た目になるよう処理されている。
 顔料塗装で表面を覆ったり、型押しでシボが表現されていたり、動物らしさは極力糊塗されている。
③剥げる。
 銀面(革のオモテ面)に吹き付けられている顔料が剥離したら、一気にみすぼらしくなる。

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こういう表情のレザーという一例

腕のいい革カバン職人がどこかにいて、評判が高まるにつれて、顧客が増え、注文が列をなすようになります。もしかしたら、この時点が作者にとっても顧客にとっても、一番幸せな瞬間かもしれません。

作り手自身にビジネス上の野心がある場合もありますし、彼の腕に目をつけて「これは売れる」と見込むビジネスマンが現れる場合もあるでしょう。

たいていのビジネスというのは、こういう方法で拡大します。マクドナルドもそうでした(映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』ご参照)。

やがて、その職人でなくても、パートのおばちゃんや賃金の低廉な外国でも流れ作業でつくれる大量生産品にシフトしていって、有力なデザイナーやマーケターやクリエイティブ・ディレクターが、「付加価値」というものをあの手この手で作り上げて、メガブランドになっていきます。

よくも悪しくも、ビジネスというのはそういうものですから、それはいいとして……。

私の好きなレザーの話をします。

使っていくうちに、ちがう魅力が滲み出てくるものがいいです。

こちらは、もう5年目になるBMJ Maverickのブルーです。海外のあちこちにも連れて行っていますし、特段手入れもしていません。ごくたまに、思い出した時だけブラシをかけたり、クリームをうすく擦り込む程度です。

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ただ、乱暴な扱いはしません。日々の付き合い方は、メンテと同等に大事なのだと思います。

元々ブルーだったものが、いまや光の当たり方によって、紺色にもグレーにも、やや緑がかっても見えるのですが、新品のブルーはこんな感じです。

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つまり、このコラムの一枚目に載せた写真は、ふたつとも同種のカバンなんです。
「いいカバンだなぁ。(作者の)後藤さん、ありがとう」と、5年たっても思います。

電車に乗ると、向い側のビジネスマンが膝に置いたカバンが見えます。
たいてい、カバンの角が剥げています。上記で語ったような顔料の問題とか、パイピングが合成皮革であるなどの理由によるのだと思います。

BMJ Maverick、剥げる気配もないんですよ(いや、削ったら剥げますよ、そりゃ)。

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もうひとつ、私の好きなレザーの話をします。

思い出を共有できるやつがいいです。
うやうやしくクローゼットから取り出して、そーっと扱うようなモノではなく、ふつうに付き合えるやつ。

時にドラ息子のように「こいつ○万円もしやがって、カネかかったな~」と思いつつも、かわいくて仕方ないカバン。時に箱入り娘のように「お前を着て、モーターサイクルで旅をしたよな~」と振り返られる革ジャン。

使うこと、たまに休ませること、手で触ってやること、よく見てやること。そういったふつうの付き合いが、結局はレザーを長持ちさせますし、好きなモノをずっと好きでいられますね。

 

レザーもそれぞれなら、使い方も人それぞれなのですが、あなたの好きなレザーを見つけて、あなたなりの態度で、永く使えばいいと思います。
スナワチのスローガンには、そういう考えが込められています。

「愛せるモノを、持たないか?」

 

スナワチ大阪ストア
大阪市西区阿波座1-2-2
06-6616-9626
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「であいについて」

スナワチ社長の前田将多です。レザー専門店「スナワチ大阪ストア」では、日本の小さなレザーブランドを取り扱っていますが、そのうちの一つ、Big Mouse Jimmy後藤さんが店舗をシェアして、ここに常駐しています。

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「後藤さんとはどうやって出会ったのですか?」と、よく訊かれますので、そのあたりをジョージ店長に語ってもらうことにします。

 

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やあ、じょーじです。ショータはれざー屋のほかに、モノかきぎょうと、くりえーてぃぶでれくたーとかいう仕事をしていていそがしそうなので、ボクが書きます。

あれはショータがまだこうこく会社にいたころの2014ねんです。ぜんべいおーぷんテニスでにしこり選手がじゅん優勝したころです。
……って、ボクはうまれていたのかな(社長註:ジョージは保護犬のため生年が不明なのです)。

「ジャパンれざーアワード」という公募のこんてすとがあって、にほん全国のうでっこきのれざークラフツまんたちが「バッグぶもん」「ふっとウェアぶもん」「ふぁっしょん雑貨ぶもん」というそれぞれのかてごりーに作品をおうぼしてきます(いまはかてごりーが変わっているようです)。

その応ぼさくひんが、おおさかの阪急ひゃかてんで展示されるいべんとがありました(これもいまではとうきょうでしか開催されていないみたいです。なんやねん)。

スナワチを構想ちゅうのショータは、つくり手をさがすために作品てんじ会をみにいき、ひとつひとつ写真をとってちぇっくしていきました。

そのときに目にとまったのが、ゴトウのバッグでした。すてっちが特ちょう的で、なんとなくウェスタンなふんいきが男らしくてカッコいいと思いました。

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初期のさくひんははハズかしいと思うのでゴトウ、ゴメン…

ショータは、主催しゃに電話をして、その作家のれんらく先をたずねました。
ところが
「こじん情報なのでおしえられません」
とことわられました。みなさんバイヤーにアッピールしたくて出すのに、なんじゃこりゃです。
ショータはあきらめずに、「では、私のれんらく先をお教えしますので、おつたえください」ということにして、ようやくゴトウからめーるがきました。

ショータはおおさか港からふぇりーにのって、とうじおおいた県にいたゴトウに会いにいきました。12がつのめちゃさむい日でした。

はじめてあったゴトウは、ぬぼーとしててあまりたくさん話すたいぷではありませんでしたが、かえりは駅までクルマでおくってくれて、いいひとそうでした。
そのひ、バッグをひとつおーだーして、翌年でき上がったそれを見て、ゴトウの腕まえがたしかであることを知りました。

しかし、スナワチがおんらいんではじまったのは、それからやく1年後です。
会社をやめたショータは、ゴトウにスナワチ用のれざー製品をいくつか発注してから、カナダでかうぼーいをしたり、帰国ごに本をかいたりしました。

スナワチほっそく以来、とりあつかいぶらんどのひとつでしたが、2018年に店ぽをつくる時に連らくすると、「いっしょにやりたい」とゴトウから要ぼーがありました。

しょーたは一瞬かんがえたのちに、しょうだくし、アトリエがあるお店にすることにしました。ゴトウはじんせいのほとんどを地元ですごしてきて、工房にこもってレザーでモノをつくっていましたから、そとの世界にでたかったみたいです。
「おおいたにはあまり好きなものがなかった。家業ののう業も、田んぼにはいるのが好きじゃなかったし、アウトドアも興味ないから自然も好きじゃないし……」
ゴトウはたまにさびしいことをいいます。

ショータはとうきょう、あめりか、おおさか、いんどねしあ、かなだと、あちこちに住んできたヒトなので、いろんなばしょを知るのはゴトウのクリテブ、クリエイチブ、……クリエイテビナントカにもよいとおもいました。

そして、スナワチ大阪ストアでは、ボクがてんちょうに就にんすることになるのですが、ショータとゴトウはお互いにラッキーだったといいます。

 ショータも仲間がちかくにできてうれしいし、ゴトウはおきゃくさんのはんのうをジカにしることができて、こういうけいけんははじめてだそうです。これまでは、たのまれたモノをつくってのうひんしたら、それまでだったからです。

おかげさまで、ゴトウにはおおくのおーだーをいただいて、まいにちモノづくりにいそしんでいます。おまたせしているみなさんには、きがなに、おたのしみにどうぞ、とおねがいもうしあげます。

ボクはてんちょうとして、ゴトウを上からめせんで見まもり、

 
ショータのひざの上ではたらき、

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よくたべてよくねて、スナワチをささえていくつもりです。

て、いうてるまに、さっそくネムー……

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スナワチ大阪ストア
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「栃木レザーを訪問」

昨年末に、泣く子もだまる栃木レザーを見学させてもらってきましたので、レポートします。
栃木レザーと聞いても、レザーファン以外はわからないかもしれませんが、国内タンナー(レザーを鞣す工場)としては非常に高い評判を獲得している企業です。そうです、いち企業です。
栃木レザーの名前が売れすぎてしまって、栃木というのはレザーの名産地なのだと勘違いしている人もいますが、栃木レザー株式会社という企業がそこにあるだけです。

ここで、レザーにはクロム鞣しとタンニン鞣しがあるというお話の復習をしなくてはなりませんが、市場に出回るレザーの9割方はクロムです。

塩基性硫酸クロムという薬品で防腐する方法で、短時間で均一に、そして比較的柔らかく鞣すことができると言えます。その代わり、経年変化による「育てる楽しみ」は少ないのが特徴です。わかりやすく言えば、革靴のレザーは多少柔らかくはなりますが、大きな変化はしない、ということです。

タンニン鞣しは、ミモザやチェスナットといった植物から抽出した樹脂(いわゆる渋)によって動物の皮を革にします。鞣すというのは、そのままでは腐ってしまう獣の皮膚を防腐処理することです。それから柔らかさや風合いや色彩について、さまざまな調整・加工がされるわけです。

栃木レザーが製造するレザーは、タンニン成分が溶け込んだ液体が入ったピット漕という、要するに銭湯のお風呂みたいなプールに皮を漬け込んでつくります。1760年に英国のマックス・ブリッジという人が考案した方法だそうですが、時間がかかるため、現代においては非効率的な製法です。タンニン鞣しであっても、通常は超大型のドラム型洗濯機のような、ドラムに入れて回す方が一般的です。
ところが、栃木レザーには国内最大のピット漕があり、ゆっくりとじっくりと、手間を惜しまずレザーをつくっています。

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これは皮を脱毛する漕です

細かくて長い工程はここでは省きます。栃木レザーのウェブサイトで「Process」をご覧になると映像付きで解説してくれます。

栃木レザー株式会社

 

栃木レザーの山本昌邦社長ともゆっくりお話しをさせていただいたのですが、私が持っていた先入観は覆されました。失礼を承知で書きますが、私は栃木レザーというのは、正直「マーケティングがうまい」会社だと思っていたのです。
確かにレザーは文句なしにいい。スナワチに常駐しているBig Mouse Jimmy後藤さんも、栃木レザーを使って製品をつくっています。

しかし、あまりにその名が日本の革業界の隅々に轟いたために、誰でも彼でもが使うようになって、製造クオリティに疑問があるようなブランドでも、とりあえず「栃木レザー使用」と謳うようになっているように思われたからです。

山本社長も「名前だけが独り歩きしてしまった現象は確かにある」と認める部分があるようですが、それでも、名に恥じないレザーを手抜きなしでつくり続け、また進化させていくことしかない、と私たちに語ってくれました。

もうひとつ感銘を受けたのは(山本社長のお話は感銘の連続だったのですが……)、「うちはすべてオープンにお見せする」という方針です。
私は以前にタンナー見学をさせてもらった経験を踏まえ、「写真を撮ってマズイところがあればおっしゃってください」と案内役の製造統括部長に事前に言ったのですが、答えは「ありません。どこでも撮ってもらってオッケーです」というフレンドリーなものでした。

レザー業界、特に鞣し屋さんというのは、歴史的に被差別部落とのかかわりがあり、「なんか怖い」と思われているのが一般にあるかと思います。
江戸時代に、村の農耕馬や家畜の牛が死ぬと、村人は部落に持っていって賤民にその処理をさせました。しかも、それは穢れのある行為とされ忌避されたため、作業は夜に限られたといいます(『皮革の歴史と民俗』解放出版社 2009年)。

山本社長は「だからこそ、ぜんぶオープンにして、見せるんです」と胸を張ります。

どの工程でもスタッフの方が黙々と手を動かし、我々が通りかかればにこやかに挨拶をしてくださり、工場内は凛とした雰囲気が漂っていました。

 

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山本社長は商社マンとして原皮(動物の皮を剥いで、塩漬けにして売買される)を扱う仕事をしたことから、レザー業界にかかわりを持ちました。栃木レザーの経営が一時期傾いた時に、先代から乞われて一念発起して栃木に居を移し、社を継ぎ、立て直しに取り組んだそうです。

「僕が仕事しはじめた70年代には、100人いたら7、80人は革のカバンを使ってたと思う。それが今は、2人か3人よ。だけど、そういう人たちに向けて、本当にいい革をつくらなくてはいけない!」

身が引き締まる思いで拝聴しました。
見上げた社長率いる、見上げた会社でした。

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スナワチもウェブサイトに謳う通り、「誰かの評価ではなく、ご自分で本物・良品を見抜く目を持つ」少数の方々のために、「日本のクラフツマンたちが誇りを持って作る皮革製品をご提供いたします」。

2019年になりました。今年もよろしくお願い申し上げます。

 

スナワチ大阪ストア
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「正しくても、やりたくないこと」

スナワチ大阪ストアをオープンして半年になりました。
クラフツマンの後藤さんとジョージ店長と、ひと夏を越して、もうすぐ冬を迎えることになります。あっという間でしたな……。おかげさまで楽しくやっております。
後藤さんは多くのご注文をいただき、毎日せっせと仕事をしています。その後ろ姿を見ていると、「この人は本当に革でモノをつくるのが好きなんだなぁ」とつくづく感じ入ります。

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いつもシャツが同じで、別々の日だとわかりにくい後藤さんです

店は大阪の本町の裏通りにあって、非常に「入りにくい」雰囲気を醸し出しております。ジョージ店長が外に飛び出しそうな時や、エアコンをつけている猛暑の日はドアを閉めていたので、通りがかりの方が恐る恐る扉を引いて、
「入ってもいいでしょうか……?」
なんて訊いてこられたりします。
もちろん入ってきてください。ゆっくりご覧いただけるように、裏通りに開設したのです。

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東京のほか、山形、石川、福岡、大分、愛媛、神奈川、広島などなど、関西以外の遠方からお立ち寄りになる方も多く、先日は沖縄からも来客がありました。もちろん大阪旅行や出張にからめて来てくださるのですが、ありがたいことです。外国人の方も何人か見えました。スイスの盆栽アーティスト、道具入れをつくって送ったら喜んでくれてたもんな、後藤さん。

我々が毎日使うコーヒー豆も、多くの方々がお土産に持ってきてくれまして、本当に助かりました。
心の底から感謝申し上げます。

 この店は建築家の坪井秀矩さんにつくってもらう時に、私はラフの図面を描いて、内装は「探偵事務所がイメージです」と伝えました。
『話題のショップをつくる注目の空間デザイナー・建築家100人』という書籍に、坪井さんの仕事例として、スナワチが掲載されています。

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レザー製品の店であり、後藤さんのアトリエであり、私の書斎であり、コンセプトは探偵事務所。そのせいなのかなんなのか、実際に東京のIT企業に勤める女性が私のところに働き方の悩み相談に足を運ばれたり、広告会社の若手社員の方が相談という雑談に来られたりしました。私は探偵や医者ではないので、本当に雑談しかできないのですが、一緒にコーヒー飲んでおしゃべりするのは楽しいものです。あちらも「楽しかった。なんか元気出た」と思ってくれれば、まぁそれでいいでしょう。

 

はじめたからには5年、10年、それ以上と続けなくてはいけません。

もうちょっと「商売」として一生懸命やらなくてはいけないのですが、どうもダメです。
床面積1㎡毎の売上とか、前年比とかいつもいつも考えていたら、デスクでのコーヒーが苦くなります。大儲けしたら閉店後に飲むウィスキーがうまいのでしょうけど、今でもウィスキーはまずくはないです……。

オンラインストアではじまったスナワチですが、一回閲覧したらブラウザ上をいつまでも追いかけてくるような広告はしたくない、一度買ったらあれこれ度々送ってくるような店も「一度抱かれたらカレシ面する男」みたいで気持ち悪い……。
ウェブ・プロモーション的には正しいのでしょうけど、どうもダメなのです。

 

基本姿勢がこんな人間は、いいビジネスマンとはいえません。

しかし、この酔狂みたいな戯言にはつづきがあって、

 

糸井重里さんはワンちゃんについて「わたしの仕事は元気でいることです」と書かれていましたが、病める時も健やかなる時も、楽しくやることがスナワチの仕事だなぁとの思いを新たにしております。

そして今日もスナワチ大阪ストアで、あなたとコーヒー飲みつつレザーの話をできる日を待っております。あ、豆がない。

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スナワチ大阪ストア
大阪市西区阿波座1-2-2
06-6616-9626
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「ショータのうでわ」

こんかいのれざーこらむも、ボクがかきます。すなわちてんちょうのじょーじです。

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しゃちょうをしているショータのうでわについてかきます。
ショータはいつもこれをつけています。

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はたらいてる時も、ねてる時も、おふろの時も、のんでる時もつけています。

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うちのとらちゃんとたたかう時もつけています。

 

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なにかいみがあるのかきいてみたところ、「れざー屋をやるんだ」という決いひょう明で、かれがまだこうこくがいしゃのでんつーでコペーライタをしているときにつけたそうです。
コペーライタというのはなにをするしごとなのか、ボクにはわかりませんが、なんかペペッと書くらしいです。たぶんボクにもできます。よゆーです。

 ショータがその、ペペッとしてたころに、ともだちのともだちであったエム・リップルのむらかみさんに出あって、れざーでモノをつくるしごとをしているヒトたちがいることを知りました。
かれらはじぶんでかんがえて、じぶんでつくって、じぶんで売っています。だから、うれればうれるほど、かんがえる時間やつくる時間がなくなってたいへんなのではないかとおもったそうです。

だったら、ショータがペペッとしたらおやくにたてて、おきゃくさんもいいれざーぷろだくつに出あえるのではないかとかんがえたということです。

でも、かいしゃにいてペペッとするのはいわゆるあこがれの職ぎょうといわれているしごとでもあったので、ほんとうにやるゆうきはなかなかでません。

でも、「やるぜ」と決しんしたときに、kawacoyaというぶらんどをやっているマツザワさんというひとから、うでわを買いました。

これは、ぶあついいち枚のかわを、まあるく切って、かどをすこしずつ、すこしずつ削って、わっかにします。それをお湯にしずめてやわらかくして、ぎんめん(れざーのひょう面)がおもて側になるようねじってかわかします。
つぎ目がなくて、じょうぶなんです。ほとんど切れません。

それをぴかぴかにみがいてできあがりなのですが、うでにつけるときは、またごじゅう度のお湯にしずめてやわらかくします。あ、おんどはふぁーれんへいとではないく、セルシウスでいいました、ボクは。ねんのためな。

そして、れざーをゆっくりのばしてのばして、うでにとおします。かわくとちぢんで、もううでからぬけなくなります。

おふろのおゆは、よんじゅう度くらいですから、ひくいです。あ、セルシウスな。ふぁーれんへいとだと、えーと、ひゃくよん度かな。

ショータのうでをななじゅう度のおゆに入れたら、またやわらかくなってとれるかもしれませんが、ショータはやけどします。なきさけぶとおもいます。しらんけど。

そんなわけで、このうでわは切れるまで、もしくはしぬまでしておきたいと思っているそうです。

ボクはくびわもきらいなのでゴメンです。
さんぽするときも、ボクはヒモをつけられたらあるきません。だんこきょひです。

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じゆうというものは、にんげんがそのれきしをかけて獲得してきたものですから、じゆうのくににうまれたいぬであるボクにもおすそわけがあってしかるべきなのです。

ボクは、あるきたい時にあるき、はたらきたい時にはたらき、うんち出たい時に出て、ねたい時にねるのです。

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こうしょうな話をしてやったので、きょうはつかれたな。

では、はたらいたから、おやつくれショータ

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