sunawachi.com「レザー・コラム」

レザーにまつわるあれこれを不定期で書く、sunawachi.comのコラム

革を使う・着る・持つことの意味とは

レザーに触れると何故こんなに気持ちがザワつくのか。

レザーを着ると何故こんなにワクワクするのか。
ナイロンやポリエステルではこんな気持ちになりませんし、天然素材のコットンですら(少なくとも私は)ここまで延々語るべきを持つことはありません。

毛皮や皮革を身に着けることは、「死と再生」に関係があるそうです。太古・原始の文化において、普遍的な(すなわち世界中で確認されている)儀式や風習として、「獣の特別な力を得る」呪術的な行為だったというのです。

死者に着せる場合は、「より強い生命力を持っての再生・生まれ変わりを祈念する」ものとして、そして、毛皮を纏って踊ることなどは、「仮面をかぶることや刺青を入れることに共通する、異界の力を手に入れる変身にも似た手段」として、社会的意味があったのです。

レオナルド・ディカプリオが2016年に念願のアカデミー賞の受賞を果たした映画『レヴェナント』の中で、崖から落ちて死んだ馬の腹を裂いて、彼がその中に身を埋めて、一晩極寒に耐えるシーンがあります。これも、上記のような、馬が失ってしまった生命を代わりに受け取って、その生命力を自らに取り込むことによって強さを得るという意味、またはそうまでして生き抜こうという彼の決意の描写であったはずです。

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〈『レヴェナント:蘇りし者』20世紀フォックス・オフィシャルページより〉

漫才のM1グランプリで笑い飯が「鳥人(とりじん)」という傑作漫才を披露したことがありました。
あの鳥人の元ネタである仏像が奈良県興福寺にあります。迦楼羅像(かるらぞう)といってインド神話の中で、悪を喰い尽くし、人々に利益をもたらす巨鳥だそうです。
動物の頭をかぶるのも、変身の疑似行為です。獅子舞も同様です。

そういった人間を超越する能力の必要性、魔力への渇望、神話的思考が身近なものではなくなった現代の私たちにおいても、どこかで遺伝子レベルの何かによって、それを知覚することができるのではないでしょうか。
だからこそ、レザーに対してワクワクするような昂揚感が湧き立ったり、ゾクゾクするような色気を感じたり、何より、大切にしたいという気にさせられるのではないでしょうか。

ですから、レザーは特別なのです。
換言するなら、レザーを使うことで特別な気持ちにさせられるのなら、それは上に述べたようなレザーの特別な力を、あなたはすでに受け取っているということに他ならないでしょう。
オカルトではなく、人間の気持ちの動きとしてそうなら、心理的、いや、生理的な作用と言えるのでしょう。

やや理屈っぽい話になってすみません。
テキトーに掻い摘んで飲み屋での薀蓄話に使ってください…。
これをお読みになっている時点で、あなたはレザー好きなはずです。どうか名前や値段(安さ、もしくは法外な高さ)に惑わされることなく、本当に価値のあるモノを見抜いていただけることを願います。

「愛せるモノを、持たないか?」
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