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sunawachi.com「レザー・コラム」

レザーにまつわるあれこれを不定期で書く、sunawachi.comのコラム

父の革ベルト

私は父親を約十年前に亡くしています。ガンが見つかってから一ヶ月半であっという間にこの世を去ってしまいました。
父親は本とCD以外はほとんど収集する習慣はなくて、時計も靴も安物ばかりを使う人でした。
「そんなものはな、持つ人が持てば高そうに見えるし、高級品を着てたってみすぼらしい人はいる」
と口癖のように言っていました。

あ、親父の名誉のために付け加えますと、スーツだけは仕立て屋さんを家に呼んで、何十万円もするものを着ていました。まだ手頃なイージーオーダーが普及する以前の時代の話です。
その他、アメリカから通販で、カウボーイの着る服や使う物なんかはたまに買っていました。シャツとか、ブーツとか、そんなモノです。決してカッコの良いものではないのですが、人間、好きなモノを堂々と使っていればそれなりに様になるものです。

父親が死んで、母親がその持ち物を整理してしまう前に形見をもっともらっておけばよかったと、今更ながら思うのですが、私がもらったものは二点だけです。

親父が仕立て屋さんに多少の無理を言って作ってもらったウェスタンジャケット。これは、肩と背中にヨーク(布の切り替えし)が付いた上着です。あえて同じ布のまま切り替えしだけを加えたものなので一見普通のジャケット。そういうのが本国アメリカにはあまりなくて、彼はわざわざ仕立てたようです。私はこれを貰って、サイズを自分用に直してもらって、着ています。

もう一つは、革のベルト。ウェスタンらしい刺繍が入っているけど、控えめで普段にも使いやすいものです。

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父親が使った年数プラス十余年使っていることになりますが、おそらくこれからもまだまだ使えます。

私は二年前のひと夏、カナダでカウボーイをして働いていました。カウボーイに興味を持つ人というのは様々な入口から、入ってきます。乗馬から、西部劇の映画から、ブーツやシャツなどファッションから。私は父親の影響でカントリーミュージックからでした。
もう四半世紀も聴き続けてきたけど、カウボーイの実態というのがわからず、思い切って自分でやってみて「カウボーイとは何者なのか」を解き明かそうとしたのです。
それがやっと本になりました。
『カウボーイ・サマー 八〇〇〇エイカーの仕事場で』(旅と思索社より5月下旬発売)
https://www.amazon.co.jp/dp/4908309051

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本にはあえて書いていませんが、私は牧場には父親の革ベルトをして行きました。
父親はなかなか頭の良い人で、いい大学を出て、定年まで会社を勤め上げ、三人の息子を立派に、かどうか知りませんがちゃんと育てました。私には父親を越えられることなど「バカであること」くらいしかなかったんですね。バカな男が書いた、カウボーイのほぼ全て。是非、お読みいただきたいです。

レザーは、次の代に遺せるものです。この本もそうあってほしいと思って書きました。

「愛せるモノを、持たないか?」

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