sunawachi.com「レザー・コラム」

レザーにまつわるあれこれを不定期で書く、sunawachi.comのコラム

クリエーティブ・ディレクターの役割

弊社スナワチは、日本の小さなレザーブランドを厳選して取扱うオンラインストアです。

スナワチ自体も小さな会社ですが、おかげさまで顧客満足度は高く、お買い上げくださった方々には大変喜んでいただけております。そういう特別なレザー製品だけを扱っていきたいと考えています。

少しずつブランドを増やしていきたいなぁと、カバンや財布には気を配ってあちこち見に行くようにしているのですが、「これは!」と思えるレザーブランドにはなかなか出合えません。
取扱い製品の選定基準は以前にも書きましたが、いいモノは、まず見た瞬間の顔つきでこちらに語りかけてくるものがあるのです。
「俺を見ろ」
「そこらのモノと俺はちがうぞ」
そんなふうに図々しく主張してくるような気がします。それも奇をてらった風貌で不快感とセットの注目を集めるのではなく、低い声で、静かに「コレだろ」と耳打ちするように私を振り向かせます。

そうしてくるモノと、してこないモノは何がちがうのか、考えてみたところ、それは個人の思考が反映されているかどうかである、と一旦結論づけました。
私の好き嫌いはもちろんありましょうが、作り手の考えがオーラのように製品を包み込んでいるのです。

それは多数決やデータの数値で決まるマーケティングではできないことです。あくまでも個人による美的感覚がかたちづくる結実のような気がします。

日本企業の多くの製品に、少なくとも私がそれを感じることができない理由は、クリエーティブ・ディレクターの不在です。みんなで物事をなんとなく決めてしまうからです。

おそらく製品開発の部署にデザイナーが何人かいて、それぞれがいいと思うモノを企画します。そして、責任者はクリエーティブの最終責任者としてではなく、単に部署の管理者としてそこにいるため、たとえば「これは彼にしてはいい製品だと思う」「彼女のいいところが発揮されている」という個別の判断でGOを出してしまう。
さらには、「これは最近の流行にマッチしている」「売れている○○の製品によく似ている」という理由でOKしてしまう。

挙句の果てに、販売する部署や経営層のフィルターを通すことによって、突出したところ、思い切った部分は丸められ、薄められ、世に出ます。
工業製品の多くはこうしてつくられるから、おもしろくない。

クリエーティブ・ディレクター(CD)の仕事というのは、嫌われ役を買って出ることでもあります。部下のデザイナーひとりひとりの「彼にしては…」は一旦いらないのです。CD自身が描く構想にどれだけ近いか、のみで判断するべきなのです。

デザイナー個人の個性ではなく、CDの個性。それは言い換えれば独断です。
部下にとってはツライ状況かもしれませんが、だからこそCDとの信頼関係がなければ成り立ちませんし、CDは正しい判断をし続けないと信頼は保てません。

ある意味での強権を振るわないといい顔つきの製品はできないものです。もしくは、ハナから一人で設計されなくてはなかなか難しいです。特に、ジョブ・ディスクリプションがなくて、衝突を好まない日本人にはなおのことです。ジョブ・ディスクリプションというのは、「この会社でのあなたの仕事は、○○に責任を持ち、○○をすることです」と業務と責任の範囲を明確にする契約書みたいなものです。

まぁ、私もよその会社の内情は想像でしかありませんが、少なくとも、弊社が取り扱うKIGOは内山さんが、BEERBELLYは若井さんと小山さんが、m.rippleは村上さんが、Tochcaは天崎さん夫妻が、Big Mouse Jimmyは後藤さんが、考えて、設計して、つくっています。
こういうブランドをまた増やしていきたいですが、なかなか……で冒頭に戻ります。

さて、Pop-upストア博多のため、出発しなくてはなりません。

いい顔つきをしたレザー製品を見たいと思ったら、是非お越しくださいませ。

 

2018年3月2日(金)~4日(日)
連日11AM‐7PM(最終日は5PMまで)
ギャラリー・エンラセにて 福岡市中央区大名1丁目2-9

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