sunawachi.com「レザー・コラム」

レザーにまつわるあれこれを不定期で書く、sunawachi.comのコラム

サラリーマンにはできない仕事

スナワチPop-upストア博多、無事に終了しました。足を運んでくださった方々へ御礼申し上げます。

Pop-upストアをやると、弊社で取り扱う各ブランドが一覧できて、私はもちろん、立ち寄ってくれるブランドの方にも他社が手掛けるレザー製品を見られて興味深いみたいです。

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昨年、大阪でやった時にはKIGO内山さんが見えて、Tochcaの製品に「ほえぇぇ」と感心されていましたし、今回はBig Mouse Jimmy後藤さんが大分県から、Tochca天崎さんが広島県から来てくれました。天崎さんはm.rippleの製品をシゲシゲと眺めて、「この素材で、この手間だったら、割安ですねぇ……」と。
クラフツマン同士、モノを手に取ればいろいろなことがわかるようです。

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その晩、天崎さんと飲んでお話しして気付いたことを書き止めておこうと思います。

スナワチは、ひとり、ないし少人数で運営されるレザーのファクトリー・ブランドを取り扱っていますが、どのブランドも直截に言えば、「サラリーマンにはできない仕事」をしています。
どういうことか。

企業に所属してモノづくりに携わる場合、たとえば
・複雑な技術がいる工程を簡素化する
・見た目にあまり差異がないなら素材の質を落とす
・部位や個体による革の個性を、均一化する処理をする
といったことは普通に行われることです。

なぜなら、それらは「会社のためになること」だからです。
実際、KIGO内山さんも「大手メイカーは品質・価格ともに最低限のものしか職人に依頼しなくなってしまった」「日本製のカバンがこんなことでいいのか」という気持ちからKIGOを発足させたといいます。
コスト削減や工程を減らす努力をすることは、会社の利益を最大化することであって、それは企業にとっては善です。そして、会社にとっていいことをするのは、働き手であるその人にとっていいこと(評価されるポイント)です。

ところが、レベルの高い小規模ブランドなら、上記のそれらはしません。むしろ、腕の見せどころであったり、デザインや使用感の上で必須なことであったり、革でつくる意味を優先するなら避けられないところだったりします。
そこから逃げずに、不安定な収入と厳しい競争に立ち向かって、本当にいいモノを追い求めないのなら、彼らが一人とか少数精鋭でやる意味はないのです。

もちろん、その分のコストや技術料は価格に正直に反映されます。しかし、それに見合う価値がちゃんとそこにあると信じているから、彼らも私も正当な対価はいただき、つぎの仕事につぎ込みます。
本当にいいモノの価値を届け続けることが、私たちにとっての善だからです。

私(スナワチ代表の前田将多)は自分もサラリーマン出身ですから、組織にしかできない仕事があることも知っています。
それでも、社会が「いいモノを安く」「もっと安く」に驀進してきた結果が、「働いても働いても余裕がない」と、多くの人が疲弊と徒労感を感じる今日の在りようです。

私としては、世の中にはあらゆる志向があっていいし、それが当然だと考えます。
とにかく安いモノがいい人、有名なブランドがいい人、人とかぶらないモノがいい人などなど。その中でも、いいモノへの自分の価値基準を持っている人がこちらを向いてくれるように、スナワチはやっていきたいと思いを新たにしました。
マーケティングや、表層的なブランディングに惑わされないレザーファンからの評価を、少しずつ得ていきたいと思います。少しずつ……

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