sunawachi.com「レザー・コラム」

レザーにまつわるあれこれを不定期で書く、sunawachi.comのコラム

「財布とかカバンとか、いらない社会」

スマホが殺したものを数え上げればキリがありません。
まず、書籍、そしてゲーム機。それから、ラジオや音楽プレイヤー、コンパクトカメラ。その他、計算機、手帳、ペンなどもかなり喰われています。

電子決済がもっと普及したら、そのうちに財布も不要になってしまうかもしれません。
レザー製品を取り扱うスナワチとしては、困った事態になります。

電子決済は、日本ではまだ18%と浸透が遅いようです。チャイナ60%、アメリカ46%、インド38%だといいます。

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最近はタクシーでは減ってきたように思いますが、確かに、バーなどでは「現金のみ」というお店はまだまだ多いです。

日本のキャッシュレス化が進まない理由としては、
・都市生活者が多く、ATMがどこにでもある。
・安全。他人にカネを奪われる確率が低い。
・貨幣への信頼性が高い。偽札がほとんどない。
・決済サービスの乱立。あれこれありすぎて選べない。お店側も端末の用意や、審査手続きが煩雑。
・なんか怖いという意識が根強い。
などが挙げられます。

しかし、全国のATMにお金を準備する配送費や維持費が、銀行各社の大きな負担となっており、経済産業省は2027年までに電子決済普及率を40%までもっていく目標を定めています。

これは時代の潮流であり、国の要請ですから、そのうちにそのようになるでしょう。

アップルや楽天、ケータイ各社や、量販系/交通系決済会社が電子決済システムを持っているのは、個人データの取得のためです。誰が、どこで、なにを、いくらで買ったというデータを、膨大な量になるまで集めて、サービス開発に活用して、抜きんでようと競っているわけです。

生活者からしたら気持ちの悪い話でしょうけど、これももはや避けられないことです。
フェイスブックが出てきた時に、「これは個人情報を無料で集めて、分析して、個人に合った小口~大口の広告を企業に売るサービスだ(気持ちわりいっ)」と、私は感じていましたが、やがて気づきました。
「個人にとっては、自分の個人情報なんておよそ意味がない」ということに。

事実、私はフェイスブックをはじめとしたSNSも使っていて実害はない(認識していない)し、フェイスブック社の個人情報漏洩は8700万人分以上という大規模な事件でしたが、日本ではさほど話題にもならかった印象です。
それは個人にとっては痛くも痒くもないのに、国家レベルでの損害が懸念される(はっきりとは見えない)、という二重構造があるからでしょう(もちろんアメリカでは大スキャンダルでしたが、FB社は潰れることもなく存続しています)。

官民一体の目論見により、キャッシュレス化は促進されます。
スナワチに関しては、レザーの財布だけでなく、もしかしたら、将来的には、人はカバンすらも持たなくて、スマホ(ともすでに呼ばれない端末を)ひとつ持って、なにもかも用事は済ませられるような社会になるかもしれません。

それでも、あまり悲観もしていません。

時代が変わるなら、それに即したレザー製品を考案してもいいでしょう。いつの世も服は着てるでしょうから、いつか革ジャンもつくりたいですし。帽子もいいですね。

レザーと人の結びつきというのは特別なものがあると信じておりますので、化学素材やハイテクデバイスにさほど簡単に駆逐されるとは考えていません。

なにより、レザーはカッコいいから。
丁寧に縫われた財布、手応えのあるカバン、光沢が艶めかしい革ジャン、ちょっとした存在感を放つ脇役としてのレザー小物など、持っていたらカッコいいですから。
ハイテク製品と合わせて持っても、なおカッコいいですから。

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もちろん、カッコいい悪いのセンスも時代とともに変化しますが、これは理屈ではないんですよね。

頭で考える部分と、心で感じる部分を、両方バランスよく持って生きていきたいと、難しい時代だからこそ思います。

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