「正しくても、やりたくないこと」
スナワチ大阪ストアをオープンして半年になりました。
クラフツマンの後藤さんとジョージ店長と、ひと夏を越して、もうすぐ冬を迎えることになります。あっという間でしたな……。おかげさまで楽しくやっております。
後藤さんは多くのご注文をいただき、毎日せっせと仕事をしています。その後ろ姿を見ていると、「この人は本当に革でモノをつくるのが好きなんだなぁ」とつくづく感じ入ります。
店は大阪の本町の裏通りにあって、非常に「入りにくい」雰囲気を醸し出しております。ジョージ店長が外に飛び出しそうな時や、エアコンをつけている猛暑の日はドアを閉めていたので、通りがかりの方が恐る恐る扉を引いて、
「入ってもいいでしょうか……?」
なんて訊いてこられたりします。
もちろん入ってきてください。ゆっくりご覧いただけるように、裏通りに開設したのです。
東京のほか、山形、石川、福岡、大分、愛媛、神奈川、広島などなど、関西以外の遠方からお立ち寄りになる方も多く、先日は沖縄からも来客がありました。もちろん大阪旅行や出張にからめて来てくださるのですが、ありがたいことです。外国人の方も何人か見えました。スイスの盆栽アーティスト、道具入れをつくって送ったら喜んでくれてたもんな、後藤さん。
我々が毎日使うコーヒー豆も、多くの方々がお土産に持ってきてくれまして、本当に助かりました。
心の底から感謝申し上げます。
この店は建築家の坪井秀矩さんにつくってもらう時に、私はラフの図面を描いて、内装は「探偵事務所がイメージです」と伝えました。
『話題のショップをつくる注目の空間デザイナー・建築家100人』という書籍に、坪井さんの仕事例として、スナワチが掲載されています。
レザー製品の店であり、後藤さんのアトリエであり、私の書斎であり、コンセプトは探偵事務所。そのせいなのかなんなのか、実際に東京のIT企業に勤める女性が私のところに働き方の悩み相談に足を運ばれたり、広告会社の若手社員の方が相談という雑談に来られたりしました。私は探偵や医者ではないので、本当に雑談しかできないのですが、一緒にコーヒー飲んでおしゃべりするのは楽しいものです。あちらも「楽しかった。なんか元気出た」と思ってくれれば、まぁそれでいいでしょう。
はじめたからには5年、10年、それ以上と続けなくてはいけません。
もうちょっと「商売」として一生懸命やらなくてはいけないのですが、どうもダメです。
床面積1㎡毎の売上とか、前年比とかいつもいつも考えていたら、デスクでのコーヒーが苦くなります。大儲けしたら閉店後に飲むウィスキーがうまいのでしょうけど、今でもウィスキーはまずくはないです……。
オンラインストアではじまったスナワチですが、一回閲覧したらブラウザ上をいつまでも追いかけてくるような広告はしたくない、一度買ったらあれこれ度々送ってくるような店も「一度抱かれたらカレシ面する男」みたいで気持ち悪い……。
ウェブ・プロモーション的には正しいのでしょうけど、どうもダメなのです。
私のやっていることは、基本的には「人間、遊びながら働き、働きながら遊び、そんなんで生きていけるのか」という実験です。
— 前田将多 (@monthly_shota) September 9, 2018
基本姿勢がこんな人間は、いいビジネスマンとはいえません。
しかし、この酔狂みたいな戯言にはつづきがあって、
この実験は危険で、失敗すると死ぬんだけど、成功してもいずれ死ぬということは、覚えておいていいと思うんだ
— 前田将多 (@monthly_shota) September 9, 2018
糸井重里さんはワンちゃんについて「わたしの仕事は元気でいることです」と書かれていましたが、病める時も健やかなる時も、楽しくやることがスナワチの仕事だなぁとの思いを新たにしております。
そして今日もスナワチ大阪ストアで、あなたとコーヒー飲みつつレザーの話をできる日を待っております。あ、豆がない。
スナワチ大阪ストア
大阪市西区阿波座1-2-2
06-6616-9626
sunawachi.com