sunawachi.com「レザー・コラム」

レザーにまつわるあれこれを不定期で書く、sunawachi.comのコラム

「私の好きなレザーの話」

レザーというのは、動物の種類、鞣し方(タンニン鞣し/クロム鞣し)、染色、仕上げの方法などによって、種類は無限に生み出されますから、いい悪いというより、自分の好き好きで選べばいいのだと、基本的には思います。

ただ、さまざまなレザーに触れて、使っていかないと、「自分の好き」すらも判断できないということはあります。

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私の好きなレザーの話をします。

元々は動物の皮ですから、荒々しい野性味の残るものがいいです。
いわゆる高級バッグ(必ず「いわゆる」を入れたくなります)のレザーというのは滑らかだったり、はじめから柔らかかったり、洗練されているように見えるものです。

これは好き好きですから、なんとも言えないのですが、私の偏見で書きます。

そういうレザーは、ほとんど……
①店頭にある時に一番輝いて見えるように図られている。
 つまり、新品の時が一番ステキで、そこからは古びていく。
②個体差が出ないように、均一な見た目になるよう処理されている。
 顔料塗装で表面を覆ったり、型押しでシボが表現されていたり、動物らしさは極力糊塗されている。
③剥げる。
 銀面(革のオモテ面)に吹き付けられている顔料が剥離したら、一気にみすぼらしくなる。

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こういう表情のレザーという一例

腕のいい革カバン職人がどこかにいて、評判が高まるにつれて、顧客が増え、注文が列をなすようになります。もしかしたら、この時点が作者にとっても顧客にとっても、一番幸せな瞬間かもしれません。

作り手自身にビジネス上の野心がある場合もありますし、彼の腕に目をつけて「これは売れる」と見込むビジネスマンが現れる場合もあるでしょう。

たいていのビジネスというのは、こういう方法で拡大します。マクドナルドもそうでした(映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』ご参照)。

やがて、その職人でなくても、パートのおばちゃんや賃金の低廉な外国でも流れ作業でつくれる大量生産品にシフトしていって、有力なデザイナーやマーケターやクリエイティブ・ディレクターが、「付加価値」というものをあの手この手で作り上げて、メガブランドになっていきます。

よくも悪しくも、ビジネスというのはそういうものですから、それはいいとして……。

私の好きなレザーの話をします。

使っていくうちに、ちがう魅力が滲み出てくるものがいいです。

こちらは、もう5年目になるBMJ Maverickのブルーです。海外のあちこちにも連れて行っていますし、特段手入れもしていません。ごくたまに、思い出した時だけブラシをかけたり、クリームをうすく擦り込む程度です。

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ただ、乱暴な扱いはしません。日々の付き合い方は、メンテと同等に大事なのだと思います。

元々ブルーだったものが、いまや光の当たり方によって、紺色にもグレーにも、やや緑がかっても見えるのですが、新品のブルーはこんな感じです。

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つまり、このコラムの一枚目に載せた写真は、ふたつとも同種のカバンなんです。
「いいカバンだなぁ。(作者の)後藤さん、ありがとう」と、5年たっても思います。

電車に乗ると、向い側のビジネスマンが膝に置いたカバンが見えます。
たいてい、カバンの角が剥げています。上記で語ったような顔料の問題とか、パイピングが合成皮革であるなどの理由によるのだと思います。

BMJ Maverick、剥げる気配もないんですよ(いや、削ったら剥げますよ、そりゃ)。

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もうひとつ、私の好きなレザーの話をします。

思い出を共有できるやつがいいです。
うやうやしくクローゼットから取り出して、そーっと扱うようなモノではなく、ふつうに付き合えるやつ。

時にドラ息子のように「こいつ○万円もしやがって、カネかかったな~」と思いつつも、かわいくて仕方ないカバン。時に箱入り娘のように「お前を着て、モーターサイクルで旅をしたよな~」と振り返られる革ジャン。

使うこと、たまに休ませること、手で触ってやること、よく見てやること。そういったふつうの付き合いが、結局はレザーを長持ちさせますし、好きなモノをずっと好きでいられますね。

 

レザーもそれぞれなら、使い方も人それぞれなのですが、あなたの好きなレザーを見つけて、あなたなりの態度で、永く使えばいいと思います。
スナワチのスローガンには、そういう考えが込められています。

「愛せるモノを、持たないか?」

 

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