sunawachi.com「レザー・コラム」

レザーにまつわるあれこれを不定期で書く、sunawachi.comのコラム

「オーダーは、するのも請けるのもむずかしい」

1周年を迎えたスナワチ大阪ストアでは、ここのところなぜかワンオフのオーダーが続いております。ワンオフというのは「一点モノ」のことです。

一点モノというのは、「いつかこんなモノを、誰かに依頼してみたいけど、どこに頼んでいいのかわからない」というのがふつうではないでしょうか。

スナワチに常駐する後藤さんは、この1年、実にさまざまなオーダーにお応えしてきました。

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カバンや財布はもちろん、たとえば、ベルト、ウェストポーチ、盆栽アーティストの道具入れ、包丁を持ち運ぶための鞘、美容師さんのシザーケース、PCやタブレットのスリーブなどなど。

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ダンサーさんのシューズバッグ

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包丁用の鞘(さや)

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4色のトート

スナワチの取扱いブランドの中には、こういったワンオフのオーダーもお請けするところもありまして、Tochcaさんはガマ口のポーチを指定のサイズでつくってくれましたし、

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キセル入れとして使われています

KIGO内山さんは還暦お祝いだというセカンドバッグと手がけてくれました。
製作中のため、画像は完成後に……。

製品に対する一部カスタムでしたら、たいていのブランドが請けてくれます。 

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m.rippleのトートバッグにジッパーのフタを

一点モノというのは、依頼するのも、お請けするものむずかしいものです。

依頼するお客さん側からしたら、どう伝えていいのか悩むでしょうし、作り手からしたら、コミュニケーション能力が問われます。

つくるプロの目からは、依頼主の要望は、どこか相反していたり、無理な内容だったりして、昔気質の職人なら「そんなもんできねえよ! よそへ行きやがれ」とけんもほろろに断りかねません。

 では、作り手側の立場でのむずかしさを列挙してみましょう。

■レザーはなんでもあるわけではない。
それぞれ使いやすい、慣れた、好みのレザーがブランドごとにありまして、「こういう革で」という要望に応えるためには、革一枚を丸ごと仕入れなくてはなりません。

■(タンニン鞣しの場合)サンプルと同じレザーすらない。
自然に近い方法で鞣されたタンニン鞣しレザーは、動物にまったく同じ一頭がいないように、個々に差異が出やすく、同じタンナーが鞣した同じ品番のレザーであっても、色やツヤに微妙なちがいがあります。またキズやムラもあるものです。

■作者ごとに、得意な製法があって、そうでないものはお請けしづらい。
たとえば、後藤さんなら基本すべて手縫いでつくるため、布とレザーを組み合わせるのは苦手です。レザーにあらかじめ縫い穴を開けて縫うため、布ではそれができないからです。その他、作り手によって、カバン系が得意な人、小物系の人など、特性があります。

■「これとまったく同じモノをつくってくれ」はできない。
 コピー製品をつくることはできないので、まったく同じものというのはできません。同じくらいのサイズ、同じような用途のモノならできますが、既存の製品とそっくり同じなのは法的な問題はもちろん、作り手の誇りも傷つけます。

■途中でオーダーの追加や変更はできない。
製作工程において、作者は設計してから、つくる順番を頭に入れて進めます。そのため、「やっぱりここはこうしてほしい」という変更をするためには、モノをバラしたり、はじめからやり直すことになってしまいます。それにより、見積額が変わることもあります。

■既製品より安くはつくれない。
これは主に依頼主の方に大きな問題になってしまう事柄かもしれませんが、一点モノは少なくとも量産品より安くはつくれないのです。「ひとつの型をつくって、それを量産して採算ベースにのせる」というビジネスができないため、その一点で利益を生まなくては、仕事がつづけられません。
なるべく抑えられるように、既成モデルを基にしたり、過去の蓄積から無理なくできる方法を考えたりもしますが、考える時間、ゼロから取りかかる工程、要望に応える途中段階での確認、ミスした時や用途に合致させられなかった時の負担など、それはそれで通常の製作作業とは桁ちがいに気を使う仕事になることは間違いありません。

 

それでも、プロの手によって、あなただけの製品がうまく出来上がった時のよろこびはきっと価格に見合う大きなものになるはずです。まだ一年ですが、スナワチにはまだ大きな蹉跌は経験がありません。

私は、ワンオフオーダーの仕事が、広告制作に似ていることに気がつきました。
広告というのは毎回毎回一回ずつのオーダーメイドで、上記に挙げたような「これはできない」の完コピ以外のすべてを「なんとかやらなくてはいけない」なかなかムチャクチャな世界です。
前職で知らず知らずのうちに、色んな方法を学んでいたみたいです。

これからもこの独特な経験を活かして、レザーファンに「愛せるモノ」を提供していけたらという思いを新たにする次第です。

 

今月は、「BMJ後藤優太オーダー相談会」もございます。

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ワンオフはもちろん、BMJの既成モデルからのカスタムも含め、モノの大小にかかわらず、レザーでおつくりできるアイテムがあれば、ご相談にいらしてください。

日時:2019年6月15日(土)~17日(月) 11AM-7PM
場所:デザインフェスタギャラリー原宿 EAST 203
   ※WESTもあるのでご注意ください。

東京都渋谷区神宮前3-20-2

詳細はこちらもご参照ください:
「BMJ後藤優太 オーダー相談会のご案内」

See you there.
 

 

 「愛せるモノを、持たないか?」

スナワチ大阪ストア
大阪市西区阿波座1-2-2
06-6616-9626
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