「レザーは水に弱いのか」
レザー製品を手にしたお客さんから、
「水には弱いですか?」
と訊かれることがあります。
モノによるのですが、水には注意しなくてはならないレザーもあります。
レザーは、大きくはクロム鞣しとタンニン鞣しの2種類がありますが、鞣しの薬剤や染料、顔料、仕上げの方法などで無限のタイプがあるため、一概には言いにくいです。
が、一般的に、オイル分が多く含まれているレザーは水の影響を受けにくく、オイル分が少ないものは水ぶくれや水ジミができやすい傾向があるようです。
もしも、水ジミができてしまったら、固く絞った布で全体を拭き、自然乾燥させてやるのがいいかと思います。
スナワチでいうと、BMJ後藤氏が好んで起用する栃木レザーのこちらの革は、水滴を落とすと水ぶくれになってしまいます。
時間がたつとやがて目立たなくなるので、あまり気にする必要はないのですが、新品を手にしたらどうしても気になってしまうのが人情というものです。
このレザーは鮮やかな発色と、滑らかな銀面(オモテ面)の輝きが特徴なのですが、仕上げの際にアイロン(といっても家庭にある洋服用とはちがい、大型のローラーの間を通す機械)で表面がピカピカになるように圧力をかけてあります。
さらにグレージングといって、ガラスで圧をかけつつ擦るというプロセスも経ています。
ご興味がある方は栃木レザー社の映像をどうぞ:
https://youtu.be/YkrIp2dCYHg
つまり革の線維がギューッと詰まった状態にされているわけです。
そこに水滴が落ちると、水分が浸透して、そこだけ緩んでしまいます。これが水ぶくれのように一部分が盛り上がってしまう原因です。
「時間がたつと目立たなくなる」と言ったのは、使っているうちに革の線維自体が全体的にほぐれてきますので、緩んだ水ぶくれ部分も、ほかと差異が少なくなるというわけです。
シボ(革のシワシワのこと)があるレザーは、傷やシミが見えにくいという利点があります。
最近、後藤さんはこのレザーを揉んで、自然なシボを生み出すということもしています。
その揉み方も、一方向に揉む、タテ・ヨコに揉む、ナナメも含めた全方向から揉む、というやり方によって異なるシボが表現されます。
さらに、牛の背中側は線維が細やかで、腹側は粗めなため、部位によっても揉んだことによって生まれるシボがちがいます。
手で揉むことも可能ですが、それ専用の道具もあり、キリシメンといいます。これを使うとより確実に体重が乗り、美しいシボをつくることができます。
強制的に線維をほぐしていることになるため、水滴による水ぶくれも抑止できます。
自然素材であるレザーの奥深さと面白さの一端を、こんなところからも感じていただければ幸いです。
Nothing like good leather. (いいレザーほど素敵なものはないぜ)
(了)
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