「愚か者のマーケティング」
私はだいたい毎日、本を読むのですが、ビジネス書と自己啓発本はあまり読みません。
読むのは、いま興味があることの新書、知らない世界が描いてあるノンフィクション、尊敬する作家や学者のコラム、そして息抜きとしての小説が多いです。
友人から『BUSINESS FOR PUNKS』(ジェームズ・ワット著/日経BP)という本をもらいました。
ブリュードッグというクラフトビールを世界的に大ヒットさせた創業者の著書だそうです。
…だそうです、というのはまだ読んでいないんです。ごめんね、Tさん。
今度ちゃんと読もうとは思いますけど、だって帯に「人の話は聞くな。アドバイスは無視しろ」って書いてあるから、「じゃあ、読まんでいいわ」と思ってしまったのです。
かくいうスナワチも、ほとんど人のアドバイスは聞くことなく運営しております。ほとんどマーケティングというものは無視してやっております。
なぜなら、まともなマーケティングをやりたければ電通時代の仕事として、人様のお金でできたはずですし、なにより、「こういうマーケティングで、こんなに成功しました」というのにどうしてもノレない天邪鬼な自分がいるのです。
もっとわけのわからない、「なにこれ」という不可思議を求めたいですし、レシピのないものをつくりたいような、漠然とした欲求があるのかもしれません。
そもそもレザーという素材自体が、タンナーさんに言わせれば、レシピ通りにやっても毎度同じものができるわけではない奥深いもののはずです。
スナワチは非常に独特の方法で、経営をしています。
カンタンに言えば、前田将多(私)が好きなようにやって、ツイッターで好きなことを言って、「月刊ショータ」というコラムを毎月書いて、私に興味を持ってくれた人が、レザーにも関心を抱いてくれて、やがてストアに来てくれる/注文をくれる、というほぼ再現のできない手法です。
方法とか手法と書きましたが、はじめからそれをマーケティングとして計画・実施してきたわけではなくて、やってたらそうなった、というだけのハナシです。
生きてるうちに「自分の店を持つ」人がどれくらいいるかわかりませんが、それのなにがうれしいかって、はじめてのお客さんが、たまに来てくれるお客さんが、久しぶりの友人が、いつもの友人たちが、いつ来るかわからなくて、毎日のようにうれしいサプライズがあることなんです。すごいことです😎✌🏻
— スナワチ (@Sunawachi) 2020年8月10日
もちろん自分なりにマーケティングしてるつもりなんですよ。だけど何事も計画通りにはいかないというのが、スナワチを5年やっている自分の実感ですし、はじめてやる行為はだいたい失敗するというのが、カウボーイの経験から知ったことです。
科学とデータにのっとって、もうちょっと賢くやっていたら、もっと儲かっていたのでしょうけど、愚か者なりにまずまずがんばってきたほうです。
マーケティングしてないから、「ふつうの法則」が通用しません。
たとえば、’19年の10月に消費税が10%に上がり、ふつうのお店や会社は軒並み売上が下がったはずです。
しかし、スナワチはなぜかその頃から売上が高めに安定していきました。意味がわかりません。
そこから春までずっとよくて、たのしくやっていたのですが、さすがにコロナはガツン!ときました。
「おおぉ、やべえやべえ」と必死になにか考えまして、スナワチTシャツを作ったり、新製品として革下駄を発売したりしました。
価格の税抜/税込を誤って告知してしまったボストンバッグを、起死回生の(苦肉の)策としてそのまま先行予約価格として受け付けもしました…。
そんなことをしていたら夏があっという間に過ぎていきました。
この夏は京都の宇治に遊びにいっただけで、あとはあちこちでビールを飲んだ記憶はあるものの、たいした思い出も残すことなく、嵐のように去っていったような感慨があります。
7月はおかげさまで最高売上でした。いまでも「あのスナワチTシャツ、もうないんですか?」と尋ねてくれる方もいて、うれしいことです。
皆さん、ありがとうございました。
燃え尽きたのかなんなのか(いや、燃え尽きている場合ではない)、9月は静かです…。
いかんいかん、神様は私たちにラクさせてはくれません。
またなにかたのしいこと、よろこんでもらえることを考えます。
マーケティング的に、統計的に言えば、レザー業界なんてずっと逆風です。
電車で車内を眺めても、誰も革のカバンなんか使っていませんし、財布だって小さく小さくが潮流です。
ダンディズムも、モノを大切にも、風前の灯火でしょう。
しかしまぁ、『BUSINESS FOR PUNKS』はまだ読んでいませんけど、私も心だけはパンクスの端くれですから、自分の心の中にちゃんとした「オレ」がいる、そういう人たちにスナワチを訪れてほしいと思います。
See you all.
「愛せるモノを、持たないか?」
スナワチ大阪ストア
大阪市西区阿波座1-2-2
06-6616-9626
sunawachi.com