sunawachi.com「レザー・コラム」

レザーにまつわるあれこれを不定期で書く、sunawachi.comのコラム

ナントカペイ的なサービスに、店舗から思うこと

今回はレザーの話ではありませんが、あまり語られていないし、一般の方は気にもしないであろう店舗の立場から見た電子決済サービスについてのコラムです。

 

電子決済サービスの会社が乱立して、わけがわからなくなってきています。飽和状態です。
お店をやっている人なら誰しもそうでしょうけど、あちこちの会社や代理店から電話がかかってきて、「うちのサービスを導入してほしい」と営業をかけてきます。

ちょっと前なら、決済サービスごとにカードの読取端末があって、お店によってはそれらデバイスでゴチャゴチャになったものでしょう。
最近はスマホQRコードを読み取らせるシステムが増えて、乱雑さは軽減されてきたかもしれません。

ユーザーからしたら、スマホだけ持っていればモノが買えて、キャッシュバックやほぼそのままお金として使えるポイントが貯まったりして、便利なものです。

 

しかし、私のまわりの個人経営のお店をやっている人たちは総じて消極的です。
なぜなのでしょう。

現金は現金で、用意するのは結構な手間がかかります。そして、両替して小銭を用意するのは無料ではないのです。私は先日、100円玉たったの5枚が必要になり、500円玉を持って三菱UFJ銀行に行きました。
すると、驚いたことに「500円玉を100円玉5枚に両替するには、手数料540円がかかります」と言われました。

「それ、本気で言ってるんですか?」

帰り道、私は500円玉を乗せた手をじっと見るほかありませんでした……。

f:id:sunawachi_leather:20190826202941j:plain


両替カードという専用のカードをつくると無料なのですが、それも「10枚まで」といいます。100円玉を10円玉10枚にしたら終わりです。毎度そんなので済むわけないじゃないですか。

だったら電子決済に移行した方がよさそうですが、たとえばクレジットカードは、店側が手数料というものをカード会社に取られます。だいたい3%前後です。
これはなにかというと「いま手持ちの現金がないお客さんが、あなたの店に支払う3万円(例)をカード会社が保証します。つまり、そのお客さんがのちに3万円払えなくても、お店にはその額をカード会社から払います」というその保証手数料です。

100円、200円の商品を売っているお店なら、「そんな小さな個々の会計を保証してくれなくていいから、現金で払ってほしい」と当然考えます。そのため「カードのご使用は○千円以上からでお願いします」というところもあります。

 

ところが、最近の電子決済サービスの中には「決済手数料0円」というものもあります。
ソフトバンクグループのPayPay(2021年9月30日までの予定)、auau PAY('21年7月31日までの予定)、LINE社のLINE Pay('21年7月31日までの予定)など。

これまた店の立場から言いますと「当然だろ」という気がします。なぜなら、彼ら電子決済サービス会社は、個人データを集めて、解析可能なビッグデータにして企業に販売するのが目的だからです。

お客さんと店の間の買い物(取引)の間に割り込んできて、手数料を店から取り、お客さんからはデータを取り、それを企業に売ってまたおカネを取るという、取る、取る、取ることばかりの仕組みです。
ユーザー獲得競争が熾烈ですから、お客さん(消費者)にはキャッシュバックなど様々な派手な施策が行われていますが、店舗に対しては契約さえ取ってしまえば、あとはメールや電話で質問しても定型文のような返信や返答があるだけです。

担当営業としてやってくるのは世間の仕組みや、商売への理解などない若い子がほとんどで、1件契約を取ってくれば○円という歩合でやっているのでしょう。ヘタな鉄砲数打ちゃ当たる方式です。

世の中の最新の動きを知るためにも、私は何社かは導入しましたが、結局店舗がQRコードだらけになって迷惑なので、見えるところに置いてないものもあります。

 

リスペクトがない。

これが私の感想です。

自分のところのサービスを押し付けるのに必死で、政府挙げてのキャッシュレス化推進の一環でもあるから官軍気分なのでしょうか。

店舗に対して
「うちのサービスを置きたかったら、登記簿謄本を提出してください。審査します」
のように、
「いや、君が私のことを知らないように、私も君の会社など知らんぞ。謄本見せんかい」
と言いたくなる事例もありました。
架空の店舗をでっち上げて「契約取れました!」と報告する悪質な代理店(のスタッフ)も中にはあるという事情はわかりますが、お互いの関係というものをまったくわかっていない様子です。

 

今はビッグデータを獲得したものが世界を征する時代です。
しかし、データというのは、海に網を投げたらガサー! っと獲れるものではなく、あなたがたにはまったく関係のない人が、うちのような個々のお店の商品やサービスに惚れてくださって、お金とモノを等価交換した喜ばしい関係の間から生まれているということを忘れないでもらいたいと思います。

古い人間と言われようが、頭が悪いと思われようが、そういう愛情と感謝を日々感じたくてやっているのです。

 

 

「愛せるモノを、持たないか?」

スナワチ大阪ストア
大阪市西区阿波座1-2-2
06-6616-9626
sunawachi.com

文責:前田将多